第74章

「……」千雪は冷泉敏陽の手に文字を書き、彼に冷泉奥さんを見に行くよう促した。前回以来、あの悲しみに満ちた美しい婦人に会っていなかったからだ。

「君は青葉に会ったことがあるのか？」冷泉大旦那様はさらに驚き、目を輝かせて彼女の顔をじっと見つめた。

「はい」千雪は軽くうなずいた。

「では今から連れて行こう。青葉は今、目を覚ましているんだ……君のおばあさんもここにいるんだね？」「はい！」二人は療養院の独立した中庭へと歩いていった。

その高い壁に囲まれた大きな中庭は、確かに警備が厳重で、入口には二人のボディーガードが立っており、中庭の主人の重要性を物語っていた。千雪は一目で、あの日彼女に冷たい目を向けたピンク色の服を着た看護師を見つけた。彼女はちょうど目覚めている鈴木青葉の体をマッサージしており、いつものように細やかな気配りをし、笑顔で冷泉奥さんを楽しませていた。

「冷泉様」ピンク色の服の看護師は入口に人が来たのを見ると、すぐに立ち上がって礼をし、顔に甘い笑みを浮かべながら、美しい瞳で冷泉敏陽の後ろをじっと見つめていた。

冷泉敏陽は軽く微笑み、彼女に注意した。「辰彦は今日来ていないよ」

「あ」看護師の魅力的な顔には一瞬、小さな失望が浮かんだが、それをうまく隠し、すぐに愛らしい笑いに変えた。「冷泉様、今、冷泉奥さんにマッサージをしているところです。冷泉奥さんはここ数日、回復状態が良好で、悪い反応もなく、私は毎日奥さんを外に連れ出して散歩し、新鮮な空気を吸わせています……」

彼女はまるで冷泉敏陽の隣にいる千雪を完全に透明人間のように扱い、千雪に視線を向けることさえしなかった。ただ冷泉家の主人に対してのみ饒舌に話し続けた。千雪はあまり気にしなかった。彼女の注意は入室した瞬間から、ベッドの上の婦人に向けられていた。

婦人はまだ上品な白い服を着て、美しい目を開き、全身が夕日に包まれ、とても美しく静かだった。彼女は静かに夫を一目見た後、視線を千雪に移し、そこから離さなかった。今回、彼女は千雪をしっかりと見つめ、細かく観察し、その瞳に驚きの色が浮かんだ。

千雪は近づいて、まず礼儀正しく挨拶し、それからマッサージのジェスチャーをして、マッサージが必要かどうか尋ねた。以前、冷泉辰彦の愛人を演じる練習のために、彼女はしばらくマッサージと指圧を学んでいたのだ。