第75章

「敏陽、あなたはお母さんを恨んでいるの？」松本秀子は細い眉を上げ、風雪に耐えた鳳凰のような目が輝いた。「あなたはまだ、お母さんが井上郁心とあなたを引き離したことを恨んでいるの？敏陽、あなたはお母さんをとても失望させたわ。」

「最初から私はあなたとあの狐女が一緒になることに反対していたのよ。彼女が冷泉家の使用人だった時から、あなたを誘惑するつもりだったわ。後に私が彼女を追い出した後、あの女は何をしたと思う？ダンサーよ！男を誘惑して回る下賤なダンサーに！そんな安っぽい女から生まれた子供が、どれほど純粋でいられるというの？」

「母さん！」冷泉敏陽は母の言葉を遮り、目には痛みが満ちていた。「郁心をそんな風に言わないでください。あの時、彼女を裏切ったのは私たちです！」あの時、彼こそが無情で薄情な男だったのだ！母は彼がこの二十数年間、生きる屍のような思いで過ごしてきたことを理解できるだろうか？

松本秀子の目は息子のこの言葉に鋭くなった。「私たちが彼女に申し訳ないって？彼女はもともと貧しい出自の女だったわ。どうして冷泉家の長男の嫁になる資格があるというの？もし当時私がこの件を押さえ込んでいなかったら、冷泉家はとっくにあの狐女に面目を失っていたわ。」

「それに辰彦、辰浩、麗由の三人の子供たち。もし彼らが尊敬する父親がダンサー一人のために死にものぐるいだったと知ったら、どう思うでしょう？心に手を当てて考えなさい。これらの年月、あなたは彼らに対して申し訳ないと思わないの？病床で十五年も横たわっている青葉に対しても？」

冷泉敏陽の目は一瞬で暗くなった。母は決して彼の気持ちを理解しようとしないだろう。長年、彼と青葉の間には愛情はなく、ただ互いを敬う他人同士だった。彼は井上郁心を愛し、青葉にも彼女自身が愛する人がいた。しかし両家の長老の介入により、三人の子供のために、同じ屋根の下で二人の他人として生きることになった……

母にはわかるだろうか？わからない。かつて、父と母の間にも同じような悲劇があった。母はこの一生、愛情を理解したことがなく、ただ釣り合いのとれた結婚、家柄と財産だけを理解していた。母のこの悲劇は既に彼に引き継がれ、さらに辰彦や辰浩にも引き継がれるかもしれない……