第97章

雲井絢音の瞳が一瞬きらめき、男が言葉を発した後、視線は川面を通過する貨物船だけを見つめ、先ほどの怒りが一気に消え去っていた。

「辰彦、あなたはここを覚えているのね。」彼女も体を向け直し、川面を見つめ、彼と同じ一点に視線を集中させた。「私は4年前のあの雨の夜を忘れません。あなたの許しを請うつもりはありませんが、今日あなたに会えたのは、ただ伝えたかったの。あの時のことは私の本意ではなかったと。」

「辰彦、私を信じてくれる?」

冷泉辰彦はイライラとスーツの上着を脱ぎ、眼差しを輝く灯火の遠方に向けた。そう、彼はここを覚えていた。ここでこの女に捨てられたことも、そしてここで別の女性を拾ったことも。

先ほど、彼が必死に探し求めていたこの女性に突然会ったとき、彼は狂ったように、この橋のたもとで彼女を激しく嘲笑し、あるいは平手打ちをくらわせるだろうと思っていた。