第108章

階下の人々は、階段を上がる若い夫婦を見て、それぞれ思うところがあった。

「辰彦、あなたの結婚について話し合いましょう……」

冷泉辰彦はまず海辺のアパートに行ったが、部屋は空っぽで、隣の部屋も同様だった。

彼は彼女のおばあさんのことを思い出し、車で青山療育院へ向かった。まず自分の母親を見舞い、それからおばあさんの病室へ向かったが、集中治療室に移されたと告げられた。

集中治療室?おばあさんに何があったのだろう?

彼は看護師が言った病室へ急いで向かい、白髪の老婆が前回よりも弱々しく、息も絶え絶えで、目を開くこともできない状態であるのを見た。

どうしてこうなったのだろう?前回はおばあさんが老人仲間と楽しく話しているのを見たのに、あっという間におばあさんが……

病室には井上千雪の姿はなく、ただ機械の「ピッ、ピッ」という音だけが響いていた。生命を示す波形がほぼ直線に近くなっているのを見て、彼はおばあさんが本当に危篤状態であることを知った。