第164章

「ふっ……」彼は軽く咳をし、長い指を眉間に当て、目を閉じて揉みほぐした。手に持っていた書類も置き、真っ直ぐな上半身を革張りの椅子に沈めた。

彼は考え込んでいた。

会社は最近工場を拡張しており、その範囲は神戸市の周辺都市や町、そして神戸市の郊外にまで及んでいた。先ほど雲井絢音が彼にこの資料を届けたところで、紙には地理的な利点と原材料の優位性を持つ地名が明記されていた。それらはすべて神戸市郊外の辺鄙な場所だった。

これらの場所はすべて会社がすでに購入しており、工場建設の着工を待つばかりだった。しかし、その中の一つの地名が彼にペンで重点的に印をつけさせ、丸で囲ませ、考慮中であることを示していた。

この場所は市街地からそれほど遠くなく、優れた交通の便があり、最高の原材料の産地でもあった。さらに競争相手との激しい競争の末に購入したもので、工場建設には最適な選択肢と言えた。普段なら、彼は迷わずプロジェクト部門に開発と着工を指示するところだが、今は躊躇していた。