第162章

「はい、社長は開発案件で忙しいので、お伝えしておきます」適切なフォローで、職務を全うする。

冷泉敏陽は大きく手を振った。「彼らを邪魔する必要はない。ちょっと様子を見に来ただけだ。彼らが真剣だから、どうしても付き添いたいと言ったんだ。少し見て回って、すぐに戻るから、君は自分の仕事を続けなさい」

「はい」麗由はすぐに席に着き、素早く仕事モードに入った。後悔先に立たず、今からでも遅くはない。

冷泉敏陽の隣にいた重役Aが小声で言った。「冷泉様、ここは見終わったので、他の部署も回りましょう。後で会社の食堂で一杯どうですか」

「いいね」冷泉敏陽は満足げに部屋の中を一瞥してから、エレベーターの方へ向かった。

麗由は顔を上げ、大きくため息をついた。何という奇襲だ、死ぬかと思った、ふう。

待って、お父さん？お父さんはこの前、義理の姉さんから千雪の居場所を聞いていたんじゃなかった？ああ、この数日間、則安のことで頭がいっぱいで、どうして千雪が花屋で働いていることをお父さんに伝えるのを忘れていたんだろう。お父さんなら千雪とお兄さんを助けられるかもしれないのに。

「お父さん、待って！」そう思うと、彼女は仕事のルールなど気にせず、椅子を押しのけ、ハイヒールを履いたままエレベーターの方向へ走った。「お父さん、千雪の情報があります」

しかし彼女が走り着いたときには、エレベーターのドアはすでに閉まっていた。

「ああ、もう！」彼女は挫折感で大声を上げた。「いいわ、給料が減らされても仕方ない、千雪のことが大事だもの。18階の人事部、今行けばまだ間に合うわ」

叫び終わると、すぐに別のエレベーターのボタンを押し、火がついたように追いかけた。

エレベーターのドアが開くと、先ほどの取り巻き連中はすでに父親によって各部署に戻されており、先ほどの重役Aだけが父親の側にいた。

「お父さん、千雪のことで……千雪？」彼女は必死に父親の方へ走っていったが、足音が突然止まった。

父親がその場に立ち、目の前の花屋の制服を着た女性に涙ぐんだ表情を向けているのが見えた。そして前にいる背の高い女性は、額に手を当てて汗を拭う動作のまま、呆然と立っていた。どうやら目の前の鮮やかな緑のアレカヤシを運んでいたようだ。