第161章

「あの。」受付嬢も質問されて少し恥ずかしそうにした。「これは、よく分からないんですが、実は雲井部長は午前中に出かけてしまって、おそらく最上階の社長室で株主の件について話し合っているのだと思います。戻ってくる時間は知らされていません。お嬢さん、どうぞ座ってもう少しお待ちください。」

千雪は眉をひそめた。この雲井部長は一体何のつもりだろう。午前中に戻れるかどうか確かではないのに、なぜ他の社員に代理で受け取らせないのか?仕事が忙しくて忘れてしまったのだろうか?

彼女は言った。「では雲井部長に電話をかけてもらえませんか?午後2時までにお花屋さんに戻らなければならないので。」今は1時20分、彼女のお腹はとても空いていて、腕も痛くなっていた。そして彼女の忍耐も限界に近づいていた。

「はい、わかりました。少々お待ちください。」受付嬢は申し訳なさそうに微笑み、受話器を取らざるを得なかった。実は雲井部長は出かける前に彼女に警告していた。もしフラワーショップから花が届いたら、受け取らないこと、彼に電話をかけないこと、自分の仕事だけをするようにと。つまり、フラワーショップの人を完全に無視するということだった。

しかし、彼女はこの気立ての良いお嬢さんが待ちに待って、忍耐が尽きかけてもここに留まっているのを見るに忍びなかった。良心のある人なら、誰でも心が痛むはずだ。この雲井部長は明らかに人をからかっているのだ。

彼女は雲井部長の番号にダイヤルし、まず業務報告をした。「雲井部長、高橋補佐のアシスタントがちょうど花かごを届けに来ました。お預かりしましたが、相手は花かごの中のカードを必ず見て、午後までに高橋補佐に返事をするようにとのことです。」

「どの高橋補佐だ?」

「高橋遠名補佐です。」

「ああ、それは捨てろ。」

「それから、フラワーショップの観葉植物が届いていますが、受け取りますか?あるいは私が代わりに受け取りましょうか?」

「いいだろう。だが受け取る前に、彼女にその観葉植物を人事部に届けさせろ。これは葉野社長へのプレゼントだ。」

「はい、わかりました。ところで、いつ頃企画部に戻られますか?」

「わからない。お前は自分の仕事をしていろ。それと、私の言うことを聞き流すな。ツー...」電話は情け容赦なく切れた。