一人が長年かけて身につけた習慣は、本当に完全に変えるのは難しい。
意識的に注意しない限り、本当に不意に露呈してしまうものだ。
私は問題の深刻さに気づき、葉山夢愛に説明する暇もなく、直接キッチンから飛び出した。
そして一気に二階まで走った。
書斎を開けると、先ほどの書道の作品を探し始めた。
しかし、どれだけ探しても見つからなかった。
確かさっきまで机の上にあったはずの書が、忽然と姿を消していた。
田中遠三が片付けたのだろうか?
ぼんやりしていると、田中遠三の声が聞こえた。
「何を探しているんだ?」
私はでたらめな理由をつけた。
「あの、私のスマホが見当たらなくて!」
「スマホは手に持っているじゃないか?」
彼に指摘されて、初めて自分の手にスマホを握っていることに気づき、恥ずかしそうに頷いた。「あら、私ったら何て物忘れの激しいことか…」