第68章 補救措置

一人が長年かけて身につけた習慣は、本当に完全に変えるのは難しい。

意識的に注意しない限り、本当に不意に露呈してしまうものだ。

私は問題の深刻さに気づき、葉山夢愛に説明する暇もなく、直接キッチンから飛び出した。

そして一気に二階まで走った。

書斎を開けると、先ほどの書道の作品を探し始めた。

しかし、どれだけ探しても見つからなかった。

確かさっきまで机の上にあったはずの書が、忽然と姿を消していた。

田中遠三が片付けたのだろうか?

ぼんやりしていると、田中遠三の声が聞こえた。

「何を探しているんだ?」

私はでたらめな理由をつけた。

「あの、私のスマホが見当たらなくて!」

「スマホは手に持っているじゃないか?」

彼に指摘されて、初めて自分の手にスマホを握っていることに気づき、恥ずかしそうに頷いた。「あら、私ったら何て物忘れの激しいことか…」