近づくと、記者たちが互いに情報を交換している声が聞こえてきた。皆、伊藤家がこの大きな危機にどう対応するのか興味津々のようだった。
「今、天藤会社は火の車だよ。伊藤社長はまるで炎の上で焼かれているようなものさ!私は南日本メディアからの指示で来たんだが、夜の10時半に記者会見があるって。何か内部情報はないか?」
「いや、うちも同じだよ。10時半に記者会見があるという情報だけだ」
「伊藤社長のお父さんが入院したって聞いたぞ!」
「はぁ、こんな大事件が起きて、天藤が持ちこたえられるかどうか分からないな」
群衆の中に、もう一人の人物が目に入った。
彼は群衆の端に立ち、様子を窺いながら、誰かに仕事の報告をしているようだった。
それは田中遠三が新しく雇った助手の葉山凡だった。
「祐仁!」