第369章 再び伊藤家へ

田中遠三の好意に対して、私は断ることを選んだ。

心の中では崩壊するような感覚があったが、涙は一滴も出なかった。

私の心がすでに麻痺していたからだろうか?

それとも今日のような結果をとっくに予測していたからだろうか?

わからない!

私は黙って頭を下げ、彼のために線香を一本あげた。

目を閉じた瞬間。

まるで彼の顔がはっきりと見えたような気がした、彼は私に向かって笑っていた……

私は突然目を開けた。

この部屋には彼の写真が一枚もないのに、いつも彼が見えるような気がする。

沢田書人が隣に立って心配そうに私を見ていた、

「小雲……さっきの大師が話をしていた時、私も横で聞いていたんだけど、どうも合理的でない部分があるように感じたんだ。」

私は目を伏せたまま、心ここにあらずといった様子で答えた、「そう?」

「そうだよ!ほら、彼女は最初から最後まで、田中家の敵が松岡雄介だとは一度も言わなかったじゃないか!」

「それがどうしたの?」

「その間に誤解があるんじゃないかと思うんだ!もう一度松岡家に行って、この件をはっきりさせてみたらどうだい?」

こんな時、沢田書人は私より冷静だった。

でも私は悲しみに浸りきっていた、まるで大雨の中で一日中濡れ続けた葉っぱのように、頭からつま先まで悲しみの水を滴らせていた。

もう考える力さえ残っていなかった。

その後、沢田書人はたくさんのことを話した。

でも私には聞こえなかった。

彼の唇が動いているのが見え、目には心配の色が浮かんでいたが、彼の声は聞こえなくなっていた。

耳の中にはただ耳鳴りの音だけ。

まるで自分が宙に浮いているかのようだった。

彼はまるでネットワーク信号のように、時々途切れているように感じた……

しばらくして、彼が私の手から骨壷を奪おうとした時、私はやっと我に返った。

「沢田書人、何してるの?頭がおかしくなったの?」

目の前の沢田書人を見ると、何日も顔を洗っていないようで、無精ひげを生やし、着ているコートには泥水の跡がついていた。

どうして急にこんなだらしなくなったのだろう、朝一緒に山に登った時はまださっぱりとしていたのに。

「骨壷を渡してくれ!」

沢田書人は非常に強く主張した。