誰も見くびることはできない。
もちろん、彼女は自分自身、葉山詩織だけが楚山哲雄にふさわしいと思っていた。他のいわゆるセレブや女優、歌手、ネットアイドル、モデルなどは全て彼女から見れば消えてしまえばいいのだ。
賀川心は驚いて目を瞬かせ、再び手を伸ばして葉山大輔の手を叩いた。「あなたの妹が楚山哲雄を彼氏にしたなんて。」
葉山大輔は冷笑するだけで、まぶたさえ上げず、その目は深く暗かった。
「あいつはただのバカだ」彼の声は冷たく、感情が一切感じられなかった。
「え...でも釣り合ってるじゃない、門閥も釣り合ってるし、お父さんもきっと満足するわ」賀川心は心の中で考えた。お父さんが愛する娘がこんな婿を見つけたらどれほど興奮するか想像できる。それに葉山詩織が楚山哲雄のような彼氏を得れば、今後葉山家でさらに威張り散らすことになるだろう。