賀川心はベビー用の浮き輪をプールに投げ入れた。この浮き輪を身につけると、縁子は生き生きとし始め、両足をバタバタさせ、小さな手を水の中で揺らしながら、あっという間にプールの反対側まで泳いだ。彼は小さな口を開けて、岸辺にいるお母さんに向かって笑っていた。
葉山大輔は振り返り、デッキチェアに座っている賀川心を見た。
そのとき彼女も彼を見ていた。
「あの人は来たのか?」葉山大輔は昨日の長くて不愉快なメッセージを思い出して尋ねた。少し不機嫌そうだった。
賀川心はうなずいた。
「うん、でも私はハッキリと伝えたわ、子供を深山家には渡さないって。」
葉山大輔は「いいぞ、次に彼がくだらないことを言ってきたら、俺に会いに来させろ」と言った。どうせ縁子は一生彼の子だ。誰も連れて行くことはできない。