第503章:私に時間を無駄にしないで

かつては帰宅すればすぐに会えた人が、今では一度会うことさえこんなにも難しい。

そのことを思い出すたびに、彼は言いようのない悲しみと苦しみを感じていた。

「心姉、まず何か食べなよ」深山義彦は鶏の足を一本取って賀川心の茶碗に入れた。言いたいことがたくさんあったが、どう切り出せばいいのか分からなかった。あるいは、話すたびに彼女からより冷たい拒絶を受けるだけだった。

今では彼ももう言う勇気がなかった。

賀川心は箸を取ろうとしなかった。彼女の瞳には氷雪が降り積もったかのように、きらりと光るものがあった。結局、彼らは4年以上一緒にいたのだから、彼が何を考えているかは彼女にはよく分かっていた。ただ、本当にもう可能性はなかった。

「深山義彦、私のことは諦めて」しばらくして賀川心は非常に低い声で言った。目の前の男性を本気で諭していた。彼がこうしてしがみつくことは、彼女をより苛立たせるだけだった。