帰りの車の中で、羽柴明彦は終始黙っていた。
「羽柴社長、このまま帰ってしまって本当に大丈夫ですか?林田さんと吉田さんの間に何か問題が起きないか心配じゃないんですか?」彼が黙っていると、木村城太が逆に心配し始めた。
羽柴明彦は片手で額を押さえ、頭を少し下げ、まぶたが重なりそうになるほど疲れた様子だった。
「彼らに何が起こるというんだ、別れるとでも思うのか」
木村城太はバックミラー越しに彼を見て、今の心境を推し量った。
「社長は、彼らが別れることを望んでいるんですか?それとも望んでいないんですか?」
羽柴明彦は頭を後ろの座席に預け、完全に目を閉じ、疲れた声で言った。「私が望むかどうかに何の関係がある?どうせ今は彼らと私には何の関係もないんだ」
「でも…」木村城太は困惑した様子で、「社長、これは最初の計画とは違うんじゃないですか」