第60章 奇耻大辱

「奥様、旦那様と奥様がもうすぐ喧嘩を始めそうです。早く見に来てください!」鈴木ママは急いだ口調で言いながら、廊下から居間の方を覗き込み、いつでも仲裁に入れるよう準備していた。

「お前は俺に逆らうつもりか?」

「私があなたに逆らっているんじゃなくて、あなたが私に逆らっているのよ」夏目芽依は顔を上げて彼を見た。「お母さんが私にくれたものを、あなたは蹴飛ばしたり投げ捨てたりする。それは私に対する不敬であるだけでなく、お母さんに対する不敬でもあるわ」

今回彼女は怒りを表さず、落ち着いた口調で、道理で人を説得するのだから、声を荒げる必要はなかった。

「ふん、お前が俺に敬意を語るとはな」羽柴明彦は可笑しくなった。「はっきりさせておくが、俺たちの婚姻関係は契約に基づいている。お前と俺は、そもそも平等ではないんだ。何が敬意だ」