第107章 なんて偶然、あなたもここにいるなんて

「今見たばかり?」

「うん」金田直樹は頷いた。「ほぼ予想通りだった」

「どうするつもり?」

会議室では、株主総会が終わり、羽柴明彦は手を伸ばして自分の腰をさすりながら、あくびをした。

「まだ決めていない」金田直樹は手元の書類を整理して立ち上がった。「どうしたの?昨日はゆっくり休めなかった?」

「言わないでくれ」

羽柴明彦は袖をまくり上げ、腕を彼の前に差し出した。「ほら」

二本の紫色のあざがはっきりと見えた。これは昨夜、階段の手すりに引っかかって転げ落ちた成果だった。

「怪我したの?それなのに今日わざわざ来たの?随分熱心だね」金田直樹は冗談めかして言った。「以前は株主総会にこんなに真面目に出席したことなかったよね。欠席することも少なくなかったのに。どうしたの?今日はわざわざ怪我をしてまで来て、私に褒めてもらいたいの?」