第108章 私は働けますか

「なんで私を引っ張るのよ、見てよ、服がしわになっちゃったじゃない〜」金田凛香は夏目芽依に袖を引っ張られてトイレに連れ込まれ、不満そうに文句を言った。「この服、すごく高いのよ。お願いだから少し優しく扱ってくれない?」

夏目芽依は中を覗き込み、一つ一つのドアを確認して、誰もいないことを確かめてから振り返った。

「今回は絶対に助けてほしいの」

「どうしたのよ〜」金田凛香は口を尖らせ、まだ先ほどのことに不満を持っていた。

「私、さっき...羽柴明彦に会ったの」夏目芽依はできるだけ落ち着いて言った。

「え?どこで?」金田凛香はようやく自分の袖から視線を移した。「会社で?さっき伊藤お姉さんが下りてきたとき、株主総会は終わったって言ってなかった?彼、帰らなかったの?」

「帰らなかった」