「ふっ~」夏目芽依は口元を引き締め、眉をしかめたが、羽柴明彦を見上げると、すぐに我慢した。
羽柴明彦は手の動きを優しくした。
「痛い?」
当たり前じゃない、痛くないわけがない?皮が破れてるんだよ!
心の中ではそう思ったが、ただ首を振るだけだった。
今はそんなことを気にしている場合ではない。さっき羽柴家の人々が口論し、最後は不機嫌なまま別れたのを見たのだから、羽柴明彦の気分もよくないだろう。
10分前。
「明彦くん、株式譲渡の件はどのくらい進んでいるの?」食事を終えても、庄司美如はまだ諦めなかった。
「完了した」羽柴明彦はポケットに両手を入れ、無表情だった。
庄司美如は不機嫌な口調で、「私たちは結局一家なんだから、何事も相談し合うべきでしょう。あなたのお父さんは早くに亡くなったけど、あなたの伯父さんと私はあなたに悪くしてないでしょう?どうして私たちを他人のように扱うの?遺言書さえ見せてくれない。何?私たちがその財産を狙っていると思ってるの?」