「手早く済ませよう」羽柴明彦はベッドにうつ伏せになり、薬を塗るのを待っていた。
夏目芽依は自分が持ってきた新しい軟膏を取り出した。前の軟膏はもう完全になくなっていて、これは彼女が今日帰ってきたときに、わざわざ運転手に買ってきてもらったものだった。
以前擦りむいた二本の赤い跡はすでに紫色から黄色に変わり、あと二日もすれば治りそうだった。彼女は前と同じように傷跡に軟膏を塗りながら、その傷痕の上を視線で追い、これらの傷跡に触れるとどんな感触なのだろうかと思った。
そう思った瞬間、指はすでに触れていた。
羽柴明彦の感覚は鋭敏だった。「何をしている?」
夏目芽依は慌てて手を引っ込めた。この傷跡の由来を知ったからなのか、心理的な作用なのか、彼女は突然、羽柴明彦に対して同情の念を抱いた。