エレベーターのドアが閉まりかけたとき、カレンが外から上ボタンを押した。
「おはようございます、部長」彼女を知っている同僚たちが次々と挨拶する中、夏目芽依は隅に縮こまり、前の人のシャツを見下ろしながら、心の中で祈った。私に気づかないでください。
「夏目さん?」
彼女は心臓が跳ねるのを感じ、眉をひそめてから笑顔を取り戻した。実際、カレンが朗星に入社した日から、今日のような日が来ることは予想していた。こんな風にびくびくしながら出勤するよりも、早く見つかった方がましだ。
顔を上げると、彼女を呼んだのはカレンではなかった。
「本当に夏目さんだ〜さっきは人違いかと思ったわ」それは彼女の大学の同級生、隣のクラスの中條詩織だった。「なんて偶然」彼女は笑いながら言った。「今ここで働いてるの?」