「ほら見て、見て、あれが羽柴社長の奥さん、デザイン部のあの人よ」
「以前トラブルを起こして、デザインの著作権を密かに他社に売り渡して、リトウと私たちを敵対させたあの人?」
「あれは誤解だって言われてるじゃない。彼女みたいな人がそんなことする必要あるの?私たちみたいな貧乏サラリーマンとは違うわ、お金に困ってないんだから」
「それはわからないわよ。彼女たちみたいな人ほどスリルを求めるものよ。何をするかわからないわ。どうせ誰かがフォローしてくれるから、恐れることなんてないのよ。私はあの件、本当に彼女がやったんじゃないかと思うわ。でなければ今頃説明もないし、責任者も捕まってないでしょ?」
「声を小さくして。誰かに聞かれたら、あなたの仕事が危ないわよ」
「しーっ」
夏目芽依は耳が聞こえないわけではないので、すべてはっきりと聞こえていた。しかし、再び仕事に戻れる喜びがそのような噂話による不快感を和らげ、彼女はハイヒールを履いて胸を張ってエレベーターに乗り込み、デザイン部へと向かった。