第228章 人心不古

自分のパソコンを取り戻したものの、夏目芽依はどうも違和感を覚えていた。以前、噂好きな同僚から聞いた話では、調査チームが彼女のメールボックスから設計を無断で売却した決定的な証拠を見つけたとのことだったが、彼女が自分のメールボックスを丹念に調べても、何も見つからなかった。

朗星会社の個人用ノートパソコンは会社が一括支給したもので、ロック解除にはパスワードが必要で、メールにログインするにも各従業員の会社メールアカウントとパスワードが必要だった。しかも、このパスワードは3ヶ月ごとに強制的に変更され、彼女は誰にも教えたことがなかったので、他人が彼女のメールボックスにログインすることは不可能だった。それに、そうする必要もなかった。

もしかして会社は本当にリトウに責任を取らせるためだけのスケープゴートを探していて、金田社長は自分のバックグラウンドが強いことを知っていたから、彼女のせいにしても、リトウが大事にはしないだろうと思ったのだろうか。そうすれば騒動はおそらくこのまま収まるだろう。他の人だったらこんな簡単には済まないかもしれない。そう考えると、彼女は突然背筋が寒くなった。自分は本当に誰かに利用されていることにも気づかないほど愚かだったのだろうか?