「えっ?」夏目智子が玄関のドアを開けると、羽柴明彦がバッグを手に持って立っていた。「どうして外に閉め出されちゃったの?」振り返ると、夏目芽依はすでに逃げ去っていた。
彼女が先ほど投げつけたのは羽柴明彦だった。彼がどんな反応をするか分からないので、さっさと逃げるのが賢明だと思ったのだ。
「明彦くん、頭どうしたの?」夏目智子はすぐに羽柴明彦の額に浮かび上がった赤いこぶに気づいた。ノートパソコンの重さがそのまま当たり、避けられなかったため、数秒で大きなこぶができていた。羽柴明彦は頭が痛くて耳鳴りがし、まだ夏目芽依の「傑作」を自分の目で確認していなかった。
浴室から出てきた彼は、怒りを抑えきれず、まっすぐ階段を上り、夏目芽依の部屋へ向かった。
「ドンドンドン!」
ドアをノックする音に、夏目芽依は椅子から落ちそうになった。彼女は小さな足取りでドアの側に移動し、耳を傾けた。