お風呂に入って寝床に横になったものの、カレンは眠気が失せていた。帰ってきた時よりも頭がずっとはっきりしていた。
彼女は体を起こし、「中村海斗...中村海斗...」と彼女を送り届けてくれた男性の名前を呟いた。
女というものはこういうものだ。普段は強気で負けず嫌いに見える人でも、困難な時にヒーローのように助けてくれる人に出会うと、心の中に良い印象を残すものだ。そしてその印象はたいてい長く続き、その後の二人の関係の基盤となる。
初めて会った時のことを思い返すと、あまり愉快な場面ではなかった。カレンは今、彼の前で見せた自分の姿を非常に後悔していた。夜中に酔っ払って荒れた団地の廊下で倒れていただけでなく、朝起きてからは泣き喚いたり手を出したりと、まるで暴れる女のようだった。普通の男性なら誰でも逃げ出すだろう。