第286章 あなたの実力を見せて

「はい、どうぞ」羽柴明彦は一束の資料を夏目芽依の手に渡した。

「これは何?」半月以上も家で無職状態で、あちこち応募したのに面接の電話一本もかかってこなかった。彼女はすでに最初の大きな失望から何も期待しないようになっていた。「ウェブデザイン会社?」

「君はデザイナーになりたいんだろう」羽柴明彦は手に取ったライチの皮をむいて口に入れた。「他の会社で働くより、自分でやったほうがいい」

「どういう意思?」夏目芽依はまだ理解できていなかった。確かに手元にはデザイン会社の資料があったが、その名前は聞いたこともなかった。「紹介してくれるの?」しかし考え直してみると、何か論理がおかしい気がした。羽柴明彦は彼女が外で働くことを望んでいなかったはずなのに、どうして自分の意思に反して彼女の仕事を探すのだろう。