第496章 私はどこで寝たいか寝たい

「実は今日来たのは話したいことがあって…」と夏目芽依は言った。

羽柴明彦は顔も上げず、手元の雑誌を見つめたまま、「何の話?」と言った。

夏目芽依はテーブルの上の小豆汁を押し、「まずこれを飲んでみない?」と言った。彼女はいつも、人が好きなものを食べると気分が良くなり、コミュニケーションも取りやすくなると思っていた。

しかし羽柴明彦は眉を少し上げただけで、「なぜ?前回のように真夜中に病院に行くためか?」と言った。

夏目芽依はそこで思い出した。以前、彼女が渡した変質した小豆汁を飲んで胃腸炎になり、真夜中に病院に駆け込んで点滴を受けたことがあった。これが所謂「一度蛇に噛まれた者は十年縄を恐れる」というものなのだろうか?

お願いだから、あなたは大人の男性なのに、そんな小さなことを根に持つなんて、と彼女は心の中で思った。しかし羽柴明彦の顔を見ると、彼女は確信が持てなくなった。