「すみません、通してください。申し訳ありません、通してください、降りるんです!」
夏目芽依は高く鞄を掲げ、缶詰のイワシのような地下鉄から、無理やり押し出した。
「ふぅ~~~」彼女は大きく息を吐き、肘を上げて見ると、案の定擦れて白くなっていた。もし先ほどの人混みがもう少し密集していたら、血が出ていてもおかしくなかった。
柱に寄りかかって少し休み、片足立ちで痺れていた足がゆっくりと回復すると、夏目芽依は地下鉄の出口へと移動し始めた。
「夏目社長、おはようございます」
「おはよう…」
会社に入ると、彼女と顔を合わせる人は皆、進んで挨拶をしてきた。夏目芽依は今、自分の顔を隠したいと思った。今の彼女は、鈴木ママが無料で友情提供してくれたTシャツとジーンズを着て、髪をポニーテールにまとめ、大学生のような格好をしていて、人から夏目社長と呼ばれるのが本当に恥ずかしかった。