第515章 私は外に出る勇気がない

夏目芽依はオーブンの中で焼かれているケーキを、ほとんど目を離さずに見つめていた。

鈴木ママはフルーツティーを煮出し、一杯をテーブルに置いた。「奥様、ケーキが焼けるには時間がかかるものですよ。ずっと見つめていても仕方ありません。見ていても見ていなくても結果は変わりませんから」と鈴木ママは言った。「フルーツティーでも飲んでリラックスなさってはいかがですか」

夏目芽依はようやくケーキから視線を外し、カウンターに歩み寄った。「鈴木ママ、このケーキはあなたの言う通りに作ったんだから、もし上手くできなかったら、それは先生であるあなたの責任よ」

「はいはい、もちろん私の責任です」と鈴木ママは笑いながら言った。「上手くできたら奥様の手柄、失敗したら全部私の責任、これで安心でしょう?」