「会社での日常的なことだよ、特に何もないよ」と羽柴明彦は言った。
「そう?」羽柴おばあさんの目は鋭く、まるで誰の心も見透かすようだった。「でも、あなたがここ数日、お父さんの事故死について色々な人に聞いて回っていると聞いたわよ?病院まで行って救急記録を調べさせたとか」
羽柴明彦は彼女がこのことを話しに来たとは全く予想していなかった。てっきり夏目芽依のことについて何かを聞きつけて、自分を問い詰めに来たのだと思っていた。おばあさんのこの質問に、彼は突然言葉に詰まった。
「それを、どこで知ったんですか?」
「私がどこで知ったかはどうでもいいわ」羽柴おばあさんは彼をじっと見つめた。「ただ聞きたいのは、それが本当かどうかよ」
羽柴明彦は二秒ほど考えてから、頷いた。「本当です」