第547章 頼んでいるのは私なのよ

「奥様、まだ頭が痛いですか?」鈴木ママが心配そうに尋ねた。

夏目芽依は自分の額に触れた。彼女が聞かなければ、自分が今怪我人だということをほとんど忘れるところだった。

向かいの空の席を見て。「羽柴明彦はまた出かけたの?」

「はい、旦那様はもう仕事に行かれました。最近はお仕事が忙しいようで、いつも朝早く出て夜遅く帰ってきます」鈴木ママはため息をついた。「見ていて疲れそうです。奥様、時間があったら体を気遣うよう彼に言ってあげてください」

必ずしも仕事のためではないかもしれない、と夏目芽依は思った。でも昨夜の件はまだ解決していないのに、彼はこうして出かけてしまった。もっと重要な処理すべき事があるようだ。

「羽柴社長、山田運転手が提供した住所とあなたが残した電話番号から、こんな場所を見つけました」木村城太は手元の資料を羽柴明彦に渡した。「これは私立探偵事務所で、以前は小さな工房に過ぎませんでした。連絡先はちょうどあなたが私にくれた番号で、場所は商店街の建物の上の住宅にあります」