夏目芽依は急いで電話をかけ直した。
「芽依、もうすぐ着くから、もう話せないよ〜」予想外にも夏目冬美はそれだけ慌ただしく言うと、電話を切った。
彼が羽柴悠真の前でぺこぺこ頭を下げて、立ち退き補償金を少しでも多くもらえるよう頼む姿を想像すると、夏目芽依は背筋が冷たくなり、手のひらがしびれるような感覚に襲われた。羽柴美波の以前の態度から判断すると、この一家は自分に対して軽蔑と侮蔑の念を抱いているに違いなく、ましてや家族としては見ていないだろう。高橋山雄の登場で彼らの態度は変わったように見えたが、それは表面上のことで、心の中の考えはそう簡単には変わらないことを彼女は知っていた。
貧すれば鈍する。今日のようなことがあれば、これからどうやって顔を上げられるだろうか。ましてや夏目冬美が行った後に受けるかもしれない扱いを考えると...