中條詩織がいやいやとコーヒーを持って出て行くのを見て、夏目芽依は自分自身にも驚いた。今のこの突然の邪悪な考えは、まるで羽柴明彦がいつもやっていることのようだった。
「よくも私に命令するわね」中條詩織は給湯室に入り、心の中で非常に腹立たしく思いながら、彼女をこらしめる方法を考えていた。ふと目に入ったシンクの上に置かれた海塩の容器を見つけ、コーヒーカップに十数回振りかけてから手を止めた。「ふん!どうだ、あなたをこらしめられるかどうか見てやるわ〜」
彼女はスプーンでかき混ぜ続け、目に見えるすべての塩の粒が溶けてから、コーヒーを持って戻った。
「これは新しく入れたコーヒーです、どうぞ」今回は、動作がずっと優しくなっただけでなく、態度も前とは大きく違っていた。
夏目芽依は少し疑わしく思ったが、それでも手を伸ばしてコーヒーカップを受け取った。