第16章 海老餡の焼売

彼がなぜここに来たの?まさか問い詰めるつもり?

「車に乗って、職場まで送るよ!」橋口俊樹は窓から身を乗り出して彼女を見た。

石塚千恵はそこに立ち、彼が一体何を考えているのか観察していた!

「君のスマホと財布は私の車の中だよ、欲しくないのかい?」

彼の表情はいつも通りで、彼女を苦しめた後もいつものように、何も悪いことをしていないかのような、模範的な良き夫を演じていた。

現代人は一日食事を抜くことはできても、一日スマホなしでは過ごせない。彼女は結局車に乗り込んだ!

「荷物は?」

「後ろだよ!」

石塚千恵が振り返ると、確かに彼女のバッグが後部座席に置かれていた。

ランドローバーがゆっくりと発進し、緑の木々が生い茂る小道を走り始めた。

爽やかな木々の香りが車内に流れ込み、心が徐々に和らいでいった。