第68章 魅力的な男性3

「そうよ!」石塚千恵は力強くうなずいた。「裁判所が私にどんな謝罪をさせようとも、受け入れます。これでいいですか?」

笹木蒼馬は肩をすくめた。「それでもいいけど。でも忘れないでほしいのは、この件が公になれば、みんな富山萌花さんが自殺したことを知ることになるよ?それでもいいの?」

「あなた……」石塚千恵は恐怖で震えた。その通りだ、この件は絶対に公にできない。さもなければ従妹はこれからどう生きていけばいいのか?

石塚千恵はハンドバッグをきつく握りしめ、不満げに尋ねた。「じゃあ、あなたは何がしたいの?」

「うーん……」笹木蒼馬は考えるふりをして、苦笑いしながら首を振った。「別に君にどう謝ってほしいとは考えてないよ。こうしよう、このことは覚えておいて、その時が来たら教えるから!」

「じゃあ、決めたら教えてください!!」証拠を確かめていなくても、彼女は自分が負けることを感じていた!

「君豪ホテル」を出ると、空はすでにほの暗くなっていた。そよ風が低く吹き抜け、ひんやりとした涼しさをもたらした。しかし薄手のワンピースを着ていた彼女が感じたのは、単なる涼しさではなく、骨身に染みる寒さだった!

彼女は思わず体を縮め、自分を抱きしめながらQ7の中へ駆け込んだ。

彼女は本当に寒かった。手のひらはすずしく、風が彼女を突き抜けるようだった。

石塚千恵がこれほど寒さを感じたのは、先ほどの笹木蒼馬との対決で、汗腺から大量の冷や汗が出ていたからだ。外に出て風に当たると、急速に体温が奪われてしまったのだ!

予備の服を羽織り、疲れ果てた彼女は本革のシートに寄りかかり、ようやく少し体温を取り戻した。

笹木蒼馬との会話は非常に体力を消耗した。今の疲労と震えは、彼女がこれまで経験したことのないものだった!小学校で初めて全校生徒と教師の前でスピーチをした時でさえ、こんなに恐れおののくことはなかった!

そのとき、彼女の電話が再び鳴り、田中院長の名前が画面に表示された。

石塚千恵は電気ショックを受けたかのように、すぐに気を引き締め、姿勢を正し、非常に悔しそうに文句を言った。「ああ〜もう、しまった、寄付のことを忘れてた!」

電話に出ると、田中晴人院長の厳しく辛辣な声が聞こえてきた。「石塚さん、笹木社長と連絡は取れましたか?」