石塚千恵は男性下着店を出て数歩歩いたところで、買い物袋を持った坂本愛蘭子が追いかけてきた。「パンツは私が予約していたの、本当にごめんなさい、横取りしちゃったわね!」
「どうでもいいわ、ただのパンツよ、毎月新作が出るし、今回買えなくても次があるわ、争う必要なんてないわ!」石塚千恵はサングラスをかけ、冷たくも高慢な雰囲気を醸し出した。
「ふふ、そうね、このパンツは男性みたいなものよ、先に見つけた人のものになるわけじゃない、だって既に予約されていたかもしれないから!」坂本愛蘭子は別の意味を込めて言った。
石塚千恵はその言外の意味を察した。「坂本さんの言うことは全部正しいわけじゃないわ。パンツはあくまでモノだけど、人間は違う。人には主観的な能動性があり、選択する権利もある」
坂本愛蘭子は言葉に詰まり、歯を食いしばって言うしかなかった。「そうね!」
「うん!」千恵はうなずいた。
坂本愛蘭子は突然笑った。「千恵、あなたは本当に賢い女性ね。自分のものと、そうでないものの区別がつく。このパンツのように、あっさり手放せるのは正解よ。多くのことはそうなの、自分のものだと思い、手に入れやすいと感じても、最後の瞬間に先を越されることがある!しつこく追いかければ、しつこいと思われるだけ!」
「私はこれから彼氏の服を買いに行くから、もう行くわ!」彼女は振り返りもせずに立ち去った。
サングラスをかけた彼女の表情は、ますます重くなった。
もし時間を巻き戻せるなら、彼女は先に笹木蒼馬に執着することができただろうか、そうすれば心の呵責を背負わなくて済んだのだろうか?
「そうだとしても、あなたはやはり道徳的な非難と心の呵責を背負うことになるわ!」鈴木越哉はずばり言い当てた!
石塚千恵はエビアンを一口飲み、苦笑いした。「そう言われると少し気が楽になるわ。彼から離れない限り、何をしても道徳の底線に挑戦することになるのね!」
「ふふ、そうだよ、だから君は僕を選ぶのが一番賢明な選択だ」鈴木越哉は再び自分を売り込みながら、彼女を打ちのめし続けた。「どうして人のものを奪おうとするんだい、疲れないのかい!」
石塚千恵は彼をじっと見つめ、彼女の心の中でずっと跳ね続けていたことを口にした。「君一は私の息子よ!」