045 最初の仮面

「お母さん、どうしたの?」宮本晴は田中静の反応を不思議に思った。

田中静は顔を上げ、躊躇いながら口を開いた。「この結城凛子先生って、なんだか聞き覚えがあるような...」

秋山直子はリンゴの皮をむき終え、小さく切り分けると、一切れつまんで田中静の口に入れた。無表情で言った。「おばあちゃん、リンゴ食べて」

田中静の言いかけた言葉は喉に詰まってしまった。

宮本晴はティーカップを置き、特に気にする様子もなく言った。「そう、お母さんの麻雀仲間かしら。結城凛子っていう名前、そんなに珍しくないし」

「そうかもね」田中静はあいまいに答えた。今は歯もよくないので、特にゆっくり噛んでいた。

秋山直子はリンゴを切り終えると、皿に盛り、爪楊枝も数本刺した。

田中静は黙って秋山直子を見つめていた。秋山直子は心の中でため息をつき、うつむいて優しい声で言った。「じゃあ、学校に戻るね」