152言葉のバイオリンの音(二更)

姓が結城だと連想できるのは結城先生だけだ。

森田優子にそう言われて、秋山言葉はちょっと戸惑った。

結城杭は確かに姓が結城だが、ただ——

「あの人は私たちの学校周辺で有名な不良よ」秋山言葉は視線を戻し、森田優子を見た。「喧嘩ばかりしていて、学校周辺の人は皆彼を恐れているわ」

そんな人が結城先生と関係あるはずがない。

「そう?」森田優子の動きが一瞬止まった。この雰囲気は不良には見えないけど。

秋山言葉は森田優子が秋山直子に関心を持ちすぎないようにしたかった。「ただの学校のチンピラよ。前は隣の職業高校の生徒で、あのグループは何でもやる。今は一中の体育クラスにいるわ」

森田優子はうなずき、ようやく視線を戻した。

「でもママ、姉さんは今学校にいるはずじゃない?」秋山言葉は二枚のチケットを整理し、首を傾げて疑問そうに言った。「どうしてここにいるの?しかも結城杭みたいな人と一緒に?」