結城先生はテーブルに手をついたまま一瞬動きを止め、桑原陽太を見つめながら、声を沈ませて言った。「あなたはそう思っているのか?私が秋山直子を最後にしたのは彼女のためだと思っているのか?」
「あなたが自分の生徒に最後の枠を取らせたいのは分かります。私も自分の生徒に最後の枠を取らせたいんです」桑原陽太は結城先生をちらりと見て言った。
結城先生の濁った目には一筋の鋭い光が宿っていた。桑原陽太の言葉を聞いて、彼は深く息を吸い込み、「いいだろう」と言った。
彼はそれ以上何も言わず、ただスタッフの手から資料を取り戻した。
結城先生が妥協したのを見て、桑原陽太は笑顔を浮かべ、心の中でほっとした。
やはり結城先生は結城先生だ。桑原陽太は数人の弟子のおかげで協会での地位を固めたとはいえ、結城先生が順番を変えると言い張れば、桑原陽太にはどうすることもできない。