霧島咲姫は手を振って、まったく気にしていなかった。
ただ好奇心からだけだ。結局のところ、卒業したばかりで、未知の世界に対して好奇心でいっぱいなのだ。
「チン——」
エレベーターは18階で止まり、ゆっくりと開いた。
二人は前後してオフィスに戻ると、霧島咲姫が戻ってきたのを見た人たちは急いで口を閉ざし、時々意味深な視線で彼女を見つめていた。
これらの小さな動作を、霧島咲姫は当然見逃すことはできなかった。彼女はこの種の視線にあまりにも慣れていた。前回16階でも同じだった。
ただ今回の視線は、前回ほど露骨ではなく、そこまで大げさではなかっただけだ。
やはり何かしら遠慮があるようだ。
霧島咲姫は見なかったふりをして、自分の席に戻って仕事を続けたが、頭の中は朝霧翔真の言葉でいっぱいだった。
夜会に参加するなら、ドレスを着なければならないが、彼女の服は神城家を出るときに持ってこなかった。
それらは神城家のお金で買ったものだったから、持ち出す資格がなかったのだ。彼女の服は、シンプルな白いTシャツか白いシャツしかなく、とても人前に出せるようなものはなかった。
このことに気づいて、彼女は突然朝霧翔真の誘いを受けたことを後悔し始めた。
しかし、もはや事ここに至っては、後悔しても取り消す機会はなかった。
頭を悩ませて対策を考えていたとき、オフィスのドアがノックされ、スーツを着た男性が入り口に立ち、両手に箱を持って言った。「霧島咲姫さんはこちらにいらっしゃいますか?」
突然名前を呼ばれ、彼女は顔を上げて見て、立ち上がり、自分がその人物であることを示した。
男性は箱を丁重に彼女の手に渡し、その後注文書を取り出した。「ここにお名前をご記入ください。」
霧島咲姫は心の中で疑問に思った。自分はネットで何も買っていないし、何か買ったとしても、配達するのは宅配便の配達員ではないのか?
目の前の男性はスーツを着こなし、宅配便の配達員の面影は微塵もなく、むしろ営業マンのように見えた。
彼女は一瞬ぼんやりとして、ペンを手に取り、手の甲に文字を書いた。
——私は何も買っていません。
男性は彼女のこの会話方法に戸惑いを感じたが、それでも正直に答えた。「朝霧という姓の方が注文され、受取人としてあなたのお名前が記入されていました。」
そう言われて、やっと説明がついた。