第29章 継承人

なんと神城連真が帰ってきたのだ。霧島咲姫は喜色を浮かべ、手振りで示した。彼女は煌に会いたかった。

しかし神城連真は顔を曇らせ、即座に拒否した。「ダメだ」

霧島咲姫は首を振り続け、彼の言葉に反論しようとしたが、神城連真の態度は断固としており、どうしても同意しなかった。

「連真」東條未煙が後ろから現れ、笑顔で言った。「お姉さんはきっと記者会見を見て、だから煌に会いに来たんでしょう。煌の母親なんだから、中に入れてあげたら？」

その言葉は表面上は霧島咲姫のために言っているように聞こえたが、どう聞いても霧島咲姫が煌が後継者になったことを知って、親しくなろうとしているように聞こえた。

案の定、神城連真の表情が暗くなり、冷たい口調で言った。「煌は私の子供だ。将来は神城家の後継者になる。だから、お前とは何の関係もない」

彼はそこまではっきり言い切った。霧島咲姫がどんな意見を持っていても、誰も変えることはできない。

霧島咲姫は体が硬直した。どうしてこうなるの？

彼女はただ煌に会いたかっただけ。煌が苦労するのが心配だった。どうしてこんなことに？

神城連真！どうしてそんなに冷酷なの！

霧島咲姫は諦めず、地面に膝をつき、彼のズボンにすがりついて必死に懇願した。

しかし彼女のその姿は、他人の目には道化のように映り、本当に見苦しかった。

東條未煙の目に成功の色が閃いた。彼女は甘い声で言った。「連真、お姉さんは体が弱いのよ。膝をつかせないで。ただ煌に一目会うだけなら、大したことないわ」

その言葉に霧島咲姫は少し身を起こし、無意識に東條未煙を見た。

かつての東條未煙は、隙あらば彼女を皮肉っていたのに、今日はどうしたの？彼女のために良い言葉を言うなんて？

霧島咲姫には理解できなかったが、東條未煙の心の中は明らかで、綿密に計算していた。

今や記者会見も終わり、神城煌は神城家の唯一の後継者となった。つまり、もし彼女が将来神城連真と結婚して子供ができても、その子は贅沢に育てられるだけの無用の人間で、後継者とは何の関係もない。

なぜ霧島咲姫がここで騒ぎを起こすのを利用しないのか。うまくいけば神城煌を取り戻せるかもしれない。

そうなれば、彼女を邪魔する者は誰もいなくなる。

東條未煙の目に光が閃き、計画をしっかりと練っていた。