第30章 くそったれ

気持ち悪い?

この言葉を彼女はもう十回以上聞いていて、とっくに慣れていた。

霧島咲姫はまだ笑っていた。彼女の視線は二人の間を行き来し、そこに偽善と吐き気を催すものを見た!

彼女が何年も愛してきた男は、結局、真心を間違った相手に捧げていたのだ。

自分の目が節穴だったのが悪い。人を見る目がなかった。巧妙なつもりが裏目に出た。

そのとき、一台の車が彼らの横に停まった。

神城淵司が車から降り、側にいた秘書が彼に傘を差し出した。

この光景を見て、彼は眉間にしわを寄せた。

霧島咲姫のことは好きではなかったが、それでも彼女がこんなにみじめな姿を見るのは忍びなく、結局、秘書に前に出て彼女を助け起こすよう指示した。

霧島咲姫は無表情で神城淵司を見つめ、彼が何を考えているのか分からなかった。