第60章 ただの破れた靴

神城淵司の誕生日

神城家全体が非常に賑やかだった。神城家唯一の後継者として、神城連真は当然のことながら最前列に立っていた。女性に対する誤解を除けば、この父子は西平でも屈指の良好な親子関係と言えるだろう。

「お父さん、後であまり飲まないでね」連真は忠告した。

年齢が上がるにつれて、様々な病気が現れてくる。神城淵司は付き合いが多く、高脂血症や高血圧は大病とは言えないが、それでも注意が必要だった。

しかし神城淵司は傍らにいる東條未煙を見て、表情が良くなかった。だが多くの友人たちの前では笑顔を保たざるを得なかった。

「別の人に変えろと言ったはずだが？」彼は声を少し低くしたが、傍らにいた東條未煙にはハッキリと聞こえていた。

東條未煙は今日、白い長いドレスを着ていた。少し長めの首は細長く気品があり、精巧なネックレスが首に輝き、さらに艶やかさを増していた。

遠くから見ると、高貴な白鳥のようだった。

彼女はいつも白色を好んでいた。

それは人をか弱く見せることができるからだ。

神城連真は眉をしかめ、「お父さん、その話はやめよう」と言った後、東條未煙に目配せをして神城淵司と前に進み、彼女一人をその場に残した。

神城淵司は眉をひそめ、ため息をついた。「私が反対しているわけではない。ただ東條未煙は表面上見えるものとは違うんだ」

彼はこれだけの年月を生きてきて、こういったことには詳しかった。

しかし今回、神城連真はそれ以上説明しなかった。

「菅田家のお嬢さんがもうすぐ来る。彼女とダンスパートナーになりなさい。彼女は海外から帰ってきたばかりで、国内にはあまり友達がいない。夫婦にはなれなくても友情はある。妹が一人増えたと思えばいい」神城淵司はこの件をはっきりと説明した。

しかし神城連真が振り向くと、霧島咲姫と朝霧翔真が愛情のこもった視線を交わしているのが見えた。

——朝霧翔真、なぜここにいるの？

本来、彼女は今日は部屋から出るつもりはなかった。一条執事は彼女に親切で、今日宴会があることを伝え、公私ともに出席する必要はないと言ってくれた。

しかし煌がとても空腹で、部屋にいたくないと言ったので、彼女はこっそりと食事を持って彼を裏庭に連れて行こうとしていた。

まさか朝霧翔真に出くわすとは思わなかった。