第77章 誘拐される

「咲姫、もう一ヶ月も会ってないわね。今回は会社が休みになって、どこかに遊びに行かない?」電話の向こうは立花心蕾だった。彼女は最初とても心配していたが、今の様子を見て安心したようだ。

霧島咲姫の美しい顔に、目が少し瞬いた。

確かに神城家に来てからずっと会っていなかった。

立花心蕾は彼女が少し心を動かしたのを見て、目に喜びを浮かべた。「あなたがお花を見るのが好きなのは知ってるわ。明日、西平で牡丹の大会があるの。見逃さないで!」

結局、霧島咲姫はそんな風にうっかり騙されて承諾してしまった。

彼女も確かに外出したかった。結局、神城連真も彼女を制限していなかったのだから。

翌日

太陽が大地に惜しみなく降り注ぐ中、立花心蕾は自分のクラシックカーで神城家まで霧島咲姫を迎えに来た。霧島咲姫はそれを見て、目に笑みを浮かべた。

——心蕾、とても嬉しそうね。

「当然よ!今回昇進したの。芸能界がどれだけ厳しいか知らないでしょ。あんなに多くの若手タレントの世話をして、やっと給料が見られるようになったわ」立花心蕾はおしゃべり好きだった。

彼女一人だけでも、話し続けることができた。

会場に着いたのは朝の9時過ぎ。二人は早く来れば人が少ないと思っていたが、確かにそうだった。

チケットがあったので、何の問題もなく中に入った。目の前に広がる美しい花々が霧島咲姫の心を完全に魅了した。

「あなたが桔梗が好きなの知ってるわ。今回の西平展示会には、こんなに大きな野生の桔梗があるの。これも一つの見どころだって」二人は親友で、立花心蕾は彼女のことをよく理解していた。

彼女の澄んだ瞳の奥には喜びが溢れ、右手で彼女の手をしっかりと握り、離さなかった。

「もう、そんなに感動しないでよ」

霧島咲姫は感動するだけでなく、目頭が熱くなり、泣きそうになっていた。人目につかない場所で目元を軽く拭い、涙を拭き取った。

丸一日歩いても、少しも疲れを感じなかった。

「咲姫、どこかで待っていて。お腹が痛くてたまらないの」立花心蕾は我慢しようとしたが、お腹の痛みがひどく、二人は丸一日歩き回り、今はもう日が暮れかけていた。

霧島咲姫は心配そうに、うなずいて同意した。

——先に行って。私はここで待ってるわ。