第111章 会えない

部屋に戻った神城連真は手を伸ばし、思わず自分のこめかみをさすった。今の彼は、先ほど見せていた冷酷さを脱ぎ捨て、全身が疲労に満ちていた。

「連真、まだ咲姫のことで悩んでいるのか？」

父親が自分の前に現れるのを見て、神城連真は思わず再び気を引き締めたが、神城淵司の前では、彼は何の偽装もしなかった。

「父上、どうして戻ってきたのですか。」

神城淵司は思わず軽くため息をついた。「彼女のことはすでに聞いている。私は前から言っていただろう、この東條未煙が好きではないと。それはお前が頑固だったからだ。今や事態がここまで進んでしまった以上、多くのことについて、お前の心の中ではすでに分かっているはずだ。私からこれ以上言うことはないが、ただお前自身の心を見つめ直し、本当に望むものが何なのかを理解してほしい。」

このような不可解な言葉を残した後、神城淵司はゆっくりと部屋を出て行き、神城連真だけが書斎に座り、絶え間なく考え込んでいた。

「私が望むもの、それは一体何なのだろう？」

翌日早朝、神城連真は車を運転して神城家の本邸に向かおうとしていた。東條未煙も早くに目を覚まし、神城連真が出かけようとしているのを見るとすぐに後を追った。

「君は家にいた方がいい。」

神城連真は眉をしかめた。神城家の大爺様は東條未煙をあまり好ましく思っていない。もし東條未煙を連れて行けば、どんな問題が起きるか分からない。

「連真、あなたが本邸に行くつもりだということは分かっています。私も一緒に行かせてください。結局、私も当事者なのですから、いくつかのことが明らかにならなければ、私の良心も安らかではいられません。」

実際、東條未煙の心は非常に恐れていたが、将来も神城家で安定して暮らし続けるために、今回は危険を冒す必要があった。

「うん、じゃあ乗りなさい。」

神城連真は軽く返事をし、東條未煙の言うことにも一理あると思い、彼女を車に乗せ、二人は急いで神城家の本邸へと向かった。

霧島咲姫に会うことがスムーズに進むと思っていたが、予想外にも、彼らが入るとすぐに止められた。

「旦那様、申し訳ございませんが、大旦那様から前もって、霧島さんにはお会いさせないようにとの指示がございまして、私どもも本当に困っております。」