第110章 私はわざとじゃなかった

「連真……」

東條未煙がもう少し何か言おうとしたとき、一条執事が書類の入った封筒を手に歩いてきた。何か言おうとしていたが、東條未煙が神城連真の隣に座っているのを見て、口に出そうとした言葉を飲み込んだ。

「もう遅いから、早く休みなさい」

神城連真はさらりと一瞥し、一条執事はすぐに察した。彼は傍らの東條未煙に一言言うと、立ち上がって自分の部屋に戻った。

この突然の変化に、東條未煙の目は疑問で満ちていた。彼女の視線は徐々に一条執事の手にある書類の封筒に落ち、心の中に不安が広がった。

「執事さん、その手に持っているのは何ですか?」

一条執事は眉をわずかに顰め、すぐには東條未煙の質問に答えなかった。「ただの書類です。ご主人に見ていただく必要があるものです。確かに時間も遅いので、東條さんも早く休まれたほうがいいでしょう」