神城連真は病室のドアから聞こえてきた物音に気づき、すぐに視線をそちらに向けた。彼の目には少し期待の色が浮かんでいたが、ドアに現れたのが神城家の大爺様と神城煌だと分かると、何かが足りないような気持ちが一瞬心をよぎったが、すぐに隠された。
「そんなことないよ、ただ君たちがこんなに早く来るとは思わなかっただけさ」
神城連真は二人に淡く微笑みかけた。彼の様子は確かに以前よりずっと良くなっていたが、大きな隈が目の下にあるのを見て、神城家の大爺様は内心喜んでいた。
「どうした?昨夜はよく眠れなかったのか?」
神城家の大爺様の目にはからかうような色が浮かび、神城連真はどう対応していいか分からなくなった。神城家の中で、自分を抑えられるのは、おそらく大爺様だけだろう。
「まあまあ、昨日はあまりよく眠れなかったけど、大したことじゃない」
神城連真の見栄を張りながらも苦しんでいる様子を見て、神城家の大爺様は思わず笑みを漏らした。
「今時の若い者たちときたら、みんな口では否定しながら心では違うことを思っている。本当は心の中で切望しているのに、口では「ない」「要らない」と言う。さっき私が入ってきたのを見て、少しがっかりしたんじゃないか?お前は私から何も隠せないよ」
神城家の大爺様はすぐに神城連真の心を見透かし、それが神城連真をますます居心地悪くさせた。
「そんなことはないよ。ただ、ここ数日で多くのことが心の中で整理できた気がする。確かに以前は咲姫に対して申し訳ないことをした。今は本当に償いたいと思っている」
神城連真がこれほど素直なのを見て、神城家の大爺様の目には喜びが満ちた。しかし、神城連真が以前霧島咲姫にしたことを思い出すと、大爺様でさえ霧島咲姫に同情せずにはいられなかった。
「以前のお前は人を見る目がなかったとしか言いようがない。霧島咲姫はお前のためにあれほど黙々と尽くしてきたのに、お前は一度もそれに気づかなかった。その上、お前の側には狐のような女がいて、毎日お前を惑わせていた。でも今はいい、少なくともお前は彼女の正体を見抜いた。これからは、余計な考えも持たないだろう」
神城家の大爺様の叱責めいた言葉に、神城連真は思わず頭を下げた。彼は以前自分がしたことに対して、確かに申し訳なさでいっぱいだった。
「ただ、彼女が私を許してくれるかどうか分からないんです」