第189章 私はあなたを信じる

「皆さん、見て！霧島咲姫が出てきたわ。さっき社長室に呼ばれたって聞いたけど、きっと会社の機密文書の件について話していたんじゃないかしら」

「そうよね。前から彼女が霧島家のために神城家を裏切ったって噂があったでしょ。そう考えると、彼女の行動すべてが説明つくわ」

霧島咲姫が社長室から出てきたばかりだというのに、無数の視線が一瞬で彼女に注がれた。それに続いて小声の噂話が聞こえてきた。声は小さかったが、すべてはっきりと咲姫の耳に届いていた。

霧島咲姫は心の中で非常に悔しく思った。これらすべてのことについて、自分はまったく知らなかったのに、なぜ突然自分が犯人にされてしまったのか。

彼女は淡々と周囲を見回したが、何かを説明しようとはせず、ただ足早に神城グループの玄関を出た。

「はぁ…」

外に出ると、霧島咲姫は深く新鮮な空気を吸い込んだ。今、彼女の心は混乱していた。

霧島咲姫は数日前のことを思い出した。神城連真が疲れた様子で家に帰ってきたとき、おそらく会社でさっきのような憶測が広がっていたのだろう。もしかしたら最初から彼らはこの件が自分の仕業だと決めつけていたのかもしれない。そして、これらのことを連真が知らないはずがなかった。

「連真」

それでも、神城連真は自分の前でこの件について一度も触れなかった。瞬間的に、霧島咲姫の心に少し慰めを感じた。

「帰ってきたのか」

霧島咲姫は家に戻り、手元の仕事を終えるとソファに静かに座った。時間がとても遅く感じられた。彼女は神城連真が目の前に現れるのを待ちきれなかった。尋ねたいことがたくさんあった。

「もうこんな時間なのに、なぜ早く部屋に戻って休まないんだ？」

神城連真は壁の時計を見て眉をしかめた。彼の目には心配の色が浮かんでいた。今の霧島咲姫の体調はまだあまり良くなかった。

「私が今日の午後、会社に行ったこと知ってた？」

霧島咲姫の質問に、神城連真は少し驚いたが、すぐに軽く頷いた。「ああ、知っている。だがあの件については、あまり気にするな。すでに調査を命じた。すぐに結果が出るはずだ」

神城連真は手を伸ばして、軽く霧島咲姫の肩を叩き、口角をゆっくりと上げた。まるで咲姫を慰めるかのように。