霧島咲姫は神城煌に軽く白い目を向けながら、素早く部屋の洗面所に入り、真っ赤に染まった自分の頬を見つめた。咲姫は一瞬ぼんやりとして、先ほど自分がどうして思わず感情を抑えられなくなったのか、自分でもわからなかった。
「咲姫、私最近引っ越すでしょ。でも荷物が本当に多すぎて、一人でずっと片付けてるけどなかなか終わらないの。手伝いに来てくれない?」
翌日、霧島咲姫は立花心蕾から電話を受けた。親友として咲姫はもちろん迷わず承諾した。
「ちょうど最近暇だから、午後に行くわ」
神城煌を菅田ママに預けて、霧島咲姫は安心して、簡単に身支度を整えると、立花心蕾の家へと向かった。
「何なの、これ」
霧島咲姫が車で出かけ、まだ道のりの半分ほどのところで、ある交差点で一台の車に横から行く手を阻まれた。
咲姫は眉をきつく寄せたが、すぐには車から降りず、心の中の不安がどんどん大きくなっていった。
「霧島咲姫」
その車から降りてきた人物を見て、咲姫は一瞬驚き、眉をさらに強く寄せ、ハンドルを握る両手に力が入った。
「あなたなの?どうして私だとわかったの?」
神城志国が目の前に現れたのを見て、霧島咲姫の心の不安はさらに大きくなった。彼に会うといつも良いことが起きないような気がした。
「そんなに警戒しないでよ。私はあなたに何も悪いことしてないでしょ」
霧島咲姫の目に警戒心を見て取った神城志国は、軽く笑った。
「で、何か用なの?用がないなら、私はもう行くわ」
霧島咲姫はそう言いながら、再びエンジンをかけた。彼女は神城志国とこれ以上無駄話をしたくなかった。
「ちょっと待って、行かないで。今日あなたを止めたのは、渡したいものがあるからだよ」
霧島咲姫が全く情けをかけない様子を見て、神城志国も遠回しな言い方をやめ、すぐに自分の車に戻り、何かを取り出してきた。
「これは何なの?」
神城志国が車から取り出したものを一気に自分に渡すのを見て、霧島咲姫は眉をきつく寄せ、目に拒絶の色を浮かべた。
「そのうちわかるよ。じゃあ、もう邪魔しないから。また会おう」
神城志国の姿が視界から消えていくのを見ながら、霧島咲姫の目に深い思いが浮かんだ。彼女は視線を隣の正体不明の物の山に移し、数秒考えた後、頭を振って一旦それらを忘れることにし、すぐにエンジンをかけて立花心蕾の家へと向かった。