第239章 強引なキス

神城連真は一日中怒りに浸っていた。これほど長い間、彼の命令に逆らう者はいなかった。

翌朝早く、神城連真は霧島咲姫の職場にやって来た。

霧島咲姫は困惑した表情で眉をひそめ、目の前の男を見つめた。彼女は神城連真が何をしようとしているのか見てみたかった。

神城連真は冷たく言った。「行こう、話があるんだ」

そう言ったものの、霧島咲姫はまったく信じる気になれなかった。そんなはずがない。神城連真が良いことをするわけがない。自ら彼女を訪ねてくるなんて、罠を仕掛けているのではないか?彼女は思わず疑問を抱いた。

「仕事の話だ」神城連真は再度強調した。

霧島咲姫は躊躇した後、立ち上がって神城連真の後ろについて行った。神城連真は終始無言で、後ろにいる霧島咲姫はどこか違和感を覚えた。仕事の話ならこんな人里離れた場所に来るはずがないのに、それでも彼女は付いていった。

トイレの入り口に着くと、神城連真は霧島咲姫の手を引いて、トイレの角に彼女を押し込んだ。

「神城連真、あなた一体何を…何をするつもり。んっ!」

霧島咲姫は目を見開いた。男の冷たい薄い唇が彼女の唇に触れた。柔らかくて甘い…数年前とまったく同じだった。彼女は呆然として、どうすればいいのか分からなくなった。

突然、我に返った彼女は必死にもがき、ようやく神城連真を押しのけた。そして「パン」という音が響いた。一発の平手打ちが飛んだ。

神城連真の顔に…一瞬で彼の頬に五本の指の跡がついた。

彼女の手はひりひりと熱くなった。目の前の男を見て、どうすればいいのか分からなかった。確かに、彼女は認めた、後悔していた。でも手は全く言うことを聞かず、反射的に平手打ちをしてしまった。

「出て行って、恥知らず。神城連真、あなたは本当に厚かましいわ」言い終わると、彼女はためらうことなくその場を去った。

神城連真は妖艶に笑い、頭を振ったが何も言わなかった。彼は心の中で非常に喜んでいた。殴られても心のどこかで嬉しかった。

霧島咲姫は持ち歩いていた鏡を開き、既に崩れた口紅を見た。彼女の脳裏には先ほどの光景が勝手によみがえり、無意識に唇に触れた。