第311章 甘い

この言葉を言い終えると、彼は怒って立ち去った。

彼は心の中ではそう思っていたが、自分にはその実力がまったくないことも分かっていた。

だから、これからの毎日、彼はチャンスを掴まなければならない。チャンスがあれば絶対に逃してはならず、諦めずにしっかりと掴まなければならない。

しかし...すべては自分が思うほど簡単ではなく、チャンスを得ることも難しい。これらは彼にはコントロールできないことだった。

帰宅後、霧島咲姫の心は自然とずっと楽になった。今回はようやく鬱憤を晴らすことができた。その後の日々、二人の関係はますます良くなっていった。

煌もそれを見ていた。

夜、二人が帰ってくると、家政婦はすでに食事をテーブルに並べていた。煌が香りを嗅ぐと自然と出てきて、食卓では三人の笑い声が絶えなかった。

神城連真は霧島咲姫が最近少し疲れているように見えたので、直接箸を取って言った。「ほら、たくさん食べて」

こうして、霧島咲姫の茶碗にはエビがいっぱいになった。霧島咲姫は微笑んで何も言わなかった。彼女が箸を置いてエビの殻を剥こうとしたとき、神城連真はすぐに「待って、僕がやるよ」と言った。

そう言うと、彼は茶碗からエビを取り、一つ一つ殻を剥いた。二つのエビでハートの形を作り、そのようにして彼は多くの皿を並べた。これらはもちろん全て霧島咲姫のために用意したものだった。

傍らにいた煌は口が閉じられないほど笑っていた。彼は父と母が今日のように幸せそうにしているのを見たことがなかったし、彼らが今日のようにゆっくりと食事をしているのも見たことがなかった。

一瞬で、子供の心も多くの喜びで満たされた。結局、自分の両親が幸せなのを見ると、彼らの心も憂いのないものになるのだ。

霧島咲姫は幸せそうにエビを食べ、神城連真はまったく飽きる様子もなかった。煌はこうして思わず父と母の「犬の餌」(愛の表現)を食べることになった。

父親が母親をあんなに情熱的に見つめているのを見て、彼の心はどこか不均衡を感じた。この二人は何のつもりだろう?これは自分を完全に無視しているじゃないか。まさか自分の居場所がなくなったのだろうか?

考えれば考えるほど、彼の心は少し悲しくなった。結局、自分こそが余計な存在なのだ。彼はため息をつき、二人を見たが、誰も自分の気持ちに気づいていなかった。